腹上死 もどき.1

こういう仕事をしていると、さまざま思いも寄らぬときに倒れて、
意に背いて搬送されてくる人を沢山みる。

多くは交通事故、仕事中、家庭で就寝中といったものだが、
事実は小説より奇なりといったことが起こることも多い。

一番、バツが悪そうなのはいわゆる「腹上死」もどきである。
もどき、となるのはまだ死んでないからである。
面白いことに、これが起こるのは婚外交渉時にまず限られる。
やはり、スリルや興奮度が違うのだろうか。
家でのセックスの途中にご主人がひどい脳内出血を起こした例を
一例だけ知っている。
これは田舎の病院だったが、奥さんはご主人の家族にずっと
「あんたのせいで身体障害者になって」と責められて、かわいそうだった。
医師からすれば、夫婦でありながら「腹上死」しそうになるなど
純粋な人たちだなあ、と違う意味で感心していた。

あと「腹上死」もどきで印象に残っているのは、
タクシー運転手が勤務中にラブホテルに愛人としけこんでいたという例。
愛人といっても奥さんと同じ世代のおばさんだったが、
そのラブホでタクシー運転手が意識不明となってしまって運ばれてきた。
長年の愛人で患者の持病や常用薬のことも良く知っていて助かった。
病院で修羅場になるのを避けてもらいたかったので、
ほんものの家族が来る前に退散していただいた。

後から来たタクシー会社も奥さんもこの経緯は全く知らず、
客を装って会社に連絡した愛人が、
運転手がタクシー運転中に調子が悪くなって、意識が悪いので
救急車を呼んで病院に運んだと言ったのを信じていた。

できる限り余計なことを言わないようにしていたが、
タクシー会社の人間に、
「それでうちのタクシーはどこにあるんでしょうね?」 と聞かれて
救急隊から聞いていたラブホテルの所在を伝える羽目になった。
車はラブホテルの駐車場で発見された。
会社の人の同情がみるみる冷めて、軽蔑へと変わっていった。

あいかわらず、奥さんは経緯を聞かされておらず、
かといってまったくなにも疑っておらず、
「うちの人はとっても家庭思いで
 昨日も先週の日曜も外食に連れて行ってくれた」とか感謝していたが、
真相を知ってる身としてみれば、
それは不倫するんで怪しまれないように
家庭サービスしといただけだろう、と思っていたたまれなかった。

後になって、奥さんがこれは労災じゃないか、といいだしたので、
会社に聞いてみたほうがいい、といった。
彼女は会社から全てを聞かされたらしい。
それから家族の見舞いが減ったのはいうまでもない。
後に離婚されたように記憶している。
勤務中にラブホテルで遊んで挙げ句、
身体が効かなくなって、会社にも家族にも愛人にも愛想つかされたのも
自業自得であったといえる。
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by decoppati | 2004-12-18 14:06 | 脳外科の仕事
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