VIP考

病院でいうVIPというのは、
院長や教授などお偉いさんのお知り合い、政財界の大物、
やくざのトップなど何かの業界の上層の人物、
がらりとかわって院内関係者の友人や近い家族などのことである。
その中でも最もVIP度の高いのは、一部上場会社の社長や会長、
国会議員や大臣などであろうか。
私立の病院ではこういう人のために
ものすごい差額ベッドというのがフンダンに用意されている。
一泊の部屋代だけで個室の差額4万円以上は当たり前で
一番すごいのでは一泊15万円にもなるのである。
それだけのサービスをお金で買うという点、はっきりしている。
立場がVIPであってもお金が払いきれなければ普通の扱いである。
これだけのお金を何ヶ月の入院期間払う人間は
羽振りがよくて体面を重視するひとに限られることとなる。

守秘義務は貴賎なくどなたにも適応されるわけであるが、
こういうVIPのなかでも最上のクラスになると、
とりわけ厳しくプライバシーが守られることとなる。
特別仕様の個室に入り、出入りは医師でも上の人間のみ、
看護婦も上の人間のみ、平の医師では病状はわからない。
その病棟には特別の鍵がついていることもある。
昔など場合によって病院ネーム(仮名)を持っている人もいて
カルテから写真から点滴に至るまでその病院ネームが書いてあり、
ちょっと誰かが潜入しても入院していることさえばれない仕組みもあった。

VIPにまつわる昔の話で、笑うに笑えないこともあった。
VIPには検査も教授、麻酔科も教授、手術も教授がつくものだし、
実際患者さん側はそれをありがたがっていた。
ただ教授というのは大体50歳すぎで、
もちろん気力、知識は十分だが、
実際手を動かす能力というのは盛りを過ぎていることがあったり、
あまり手術などをしなくなっている人もいて、
(もちろん老いてますますという鉄人も多いが)
往々にして、教授でない講師や助教授のほうが
その手術や検査がものすごくうまいときもある。
VIPでない普通の患者さんのほうが、
そういう今が盛りのうまい医師の治療を受けることができて、
VIPがそうでもない医師の治療をうける逆転現象が起きることがあって、
なんだかなあ、という感じであった。

また、大学のお偉いさんの知り合いということで
本人の意図しないところでVIP扱いになってしまって
結構普通の人なのに特別個室を用意されて
お金が払いきれず
ありがた迷惑という人もときにいる。

私立の病院ではお金に見合ってサービスが買えるわけで
最上級の部屋にはいれば誰でもVIP待遇が受けられる。
これに対して、公立の病院などで
その自治体の議員や事務のトップ、あるいはどこかの社長が
変に威張り散らしていたり、特別待遇を求めたりすることがあり、
これには解せないものがある。
公立の病院では私立のようなサービスは望むべくもないことが多い。
だいたい高級な設定がそもそも存在しない。
上限が知れているところで他の人となにも金銭的な差額なしで
特別なサービスを受けようという歪んだ欲望は理解しがたい。
議員だろうがその自治体のトップだろうが、公立である限りは
病院は彼らの持ち物ではない。
特別扱いを受けたければ、
特別サービスを設定している病院に行って、
それなりに金銭を払うことだ。
そこで大いに威張って、わがまま放題にしたらいい。
そういう分別や財力のない人ほど、安い病院で威張りたがるのだ。
[PR]
by decoppati | 2005-04-04 01:01 | 脳外科の仕事
<< 身内が患者になったら。 立つ鳥跡を濁しっぱなし。 >>