身内が患者になったら。

医師の身内が病気になって他の医師にお世話になるときは
餅屋は餅屋ということでプロに任せるように心がけたい。
必要なことを尋ねたり、説明を求めるのに躊躇することはないが、
「目を明かせてやる」的な挑発や過剰な口出しは止めた方がいい。
とかく誰でも家族のこととなると近視眼的になり、
いつものような客観的な判断ができなくなるものである。
その結果、必要な検査や処置をするタイミングが狂ってしまって、
むしろ長期的に見ると悪い結果を招くことがある。
早く気管切開をしたほうがいいのに、可哀想だからしたくない、と
変に引き延ばしてしまって、肺炎が悪化するといった類のことだ。
外科の世界では、
家族の手術の時にはその張本人をはずす、とよく言う。
簡単にパニックに陥ってしまって
いつものような冷静な判断ができなくなって危ないからである。

ときどき判断に困った患者さんの家族から
「先生の家族だったらどうしますか?」と聞かれることがある。
私がいつも答えるのは、
「家族によって環境も関係も考え方もそれぞれ違いますから
 私の個人的な考えを他人に適応することはできません。
 たとえば、私が家族と関係が悪い人間で、
 冷たい考えを持っていたらどうしますか。
 治療法の種類とその利点、欠点といった情報は全てお話しますから
 よく相談して決めていきましょう。」
ということである。
家族のように親身に考えて欲しいという意味で
いわれているのはよくわかるが、
医師が本当に家族のように考えてしまうと、
上記のように近視眼的になって
ちゃんとした診療がなりたたなくなってしまう場面もあるわけで
あながちよいこととは思えない。
病院で働く限りは、個人的な考えを排して、
自動的に「病気が治る方向に、命が助かる方向に」何ができるかを
考え続けて動き続けていくことが必要だとおもう。
この際、家族のほうからストップして欲しいことがあったら、
言えるように配慮して、何回でも説明をし、よく相談をして
法に則って希望に適う形にする柔軟性があればよいのではないだろうか。
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by decoppati | 2005-04-13 23:27 | 脳外科の仕事
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