人が倒れるとき

救急で運ばれてくる患者の多くは、
「突然」調子が悪くなってくる人たちである。
特に消防から脳神経外科御指名でくる重症患者は
「突然」なにかが起きて意識がなくなった、という人が多い。
脳内出血やくも膜下出血、脳梗塞、頭部外傷など
いろいろな原因があるが、いずれも時も場所も選ばない。
厄介なことに50代、60代の働き盛り、大黒柱のお父さんも多い。

夜や休日に自宅で発生した場合には、
当初から近くに家族や一番親しい人が居るから、
やってくるまでに周囲の人にもそれなりの覚悟がある。
しかし、仕事中というのがとにかく多い。
そのため、発生から病院にたどり着くまで一緒にいるのは
同僚や部下、上司といった人たちで、
家族は電話で連絡されて本人に会うために直接病院にやってくる。
心配して悲壮な面持ちで必死にとるものもとりあえずやってきて、
思いもしなかった家族の昏睡状態をみて、
また、もう元には戻らないと聞いて、
信じたくないし、信じられない。

そんなとき、よく家族から聞くのは後悔の念だ。
「いつもお父さんがでかけるときなにも話をしないから、
 今日もいってらっしゃいとさえ、いってあげなかった。
 ちゃんと顔をみて、送り出してあげればよかった」
「朝、話かけられたのに邪険にしてしまった」
「頭が痛いといってたのにとりあってあげなかった」
「こんなことになるならもっと普段から
 大事にしてあげればよかった」
などなど、書ききれない。

実際、元気に朝、うちを出て行った人が、
次にあったときには昏睡状態だったり意識朦朧として、
重症で元には戻れないとなったら、後悔が尽きないと思う。
どんなにいろいろしていても、後悔は残ることだろう。
バイク事故などで亡くなる若い人ならなおさらだ。

毎日こういう模様をみていて、この仕事を始めてから
個人的には家族や友人に対して率直になるし、
素直に感謝を述べられるようになった。
オーバーかもしれないが、
こちらも家族も友人もいつ何が起きるとも知れない。
これが最後の別れになるかもしれないといつも思って
少しでも後悔が減るように一緒に過ごす時間を大切にするようになった。
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by decoppati | 2005-01-02 00:17 | 脳外科の仕事
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