脳外科としての経験を6年積んだと認められると
日本脳外科学会認定の専門医試験を受ける資格が得られる。 いまとなっては、 さらに細分化した分野での試験が林立しはじめたので この専門医試験の存在意義がどうなるのか不透明ではあるが、 受験者中、合格率6割程度のいじわるな試験として 他の科にまで勇名を馳せている。 (最近は合格率もっとあがってる) 大学や医局によっていろいろ差はあるようだが、 うちの医局の場合は5年目になると必ず大学に戻され、 約1年間なんやかんやかわいがられることになってる。 これまで落第する者がほぼ0で、 一発合格が当たり前の医局でのプレッシャーは非常に大きい。 はっきりいって、カンファレンスでねちねち聞かれることは 諸説紛々あるものが多く、オタッキーすぎて試験にはでない。 まあ、通過儀式みたいなもんである。 試験前の約2ヶ月は通常のベッド持ち(入院患者の担当)を免除され、 外来、当直、医局行事のみがdutyのいわゆる「bed free」となる。 一緒に受ける同級生たちと、朝から晩まで、休みの日も、 大学の研究室に閉じこもって勉強に明け暮れるもの、のようであった。 情報や勉強の進行度を知るため、日頃たいして仲がよくなくても むりやり同級生と一緒にいて、腹をさぐりあうもの、にみえた。 受験生のときには楽しい行事や飲み会にも 極力顔をださないもののようだった。 いろいろな疾患をまとめた「ノート」なるものを作るのは当たり前、 しかもそれを厚くすればするほど勉強した証となる、みたいだった。 私は大学受験、大学在学中、医師国家試験のときも、 ずっと試験勉強といえば、 自分の好きなように気の向いたままやってきた。 久しぶりの本格的試験である専門医試験を前にして、 初めて人からいろいろ押し付けがましく 「こういうものだ」といわれ、 実際、型にはめようとされるのは本当に不愉快だった。 どちらにせよ、 したいときに好きな勉強をして、好きなだけ遊んで、 要領よく過ごしても肝をはずさなきゃ受かるのだから、 嫌なことを我慢する必要はない。 結局、自分の居心地のいいところで勉強し、 オペラやコンサート、ドライブ、会食などにも出かけて 楽しくbed freeを過ごした。折角の自由時間なのだから。 試験には合格した。 わたしは超禁欲的になって目的を達することはできない。 やはり楽しみがないと。 尻に火がつかないと。 それはそうと、それから時が過ぎ、 受験生の気質も変化しており、 段々、思い違いしてる輩が目立ってきた。 やれ、試験前の1ヶ月は当直も免除して欲しいだ、 最低限の日中の仕事もしたくないだ、 うだうだと文句が多い。 大体、文句言ってる時間自体が長いんだよね。 文句言ってる暇に体動かしたほうが早いって。 専門医試験は自分のために受けるのであって、 本来は医局のメンツのためではないし、 先輩のためでもない。 自分が試験を受けるせいで、仕事量を若干軽減するべく 他の医師たちが気を使ってくれることに感謝することはあっても、 「こうしてくれなきゃ、落ちますよ。落ちたら医局が恥ずかしいでしょ?」と さらに楽な待遇を要求し、脅すのは筋違いとしかいいようがない。 過酷な状況でも勉強しようと思えばできるし、 できなきゃ、自分の能力の無さを恥じたほうがいい。
by decoppati
| 2005-10-28 23:46
| 脳外科の仕事
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