2005年 02月 09日 ( 1 )

ボケ予防について一考。

脳神経外科は基本的に
脳や脊髄の手術を要する疾患のための科であるが、
なまじっか「脳」がついているために、
頭のことならなんでもかんでも相談にこられることが多い。
もちろん脳神経外科疾患で結果として「ボケ」ることもあるわけだが、
加齢によるボケは専門外である。

ボケで来るケースに似通った特徴があるのが興味深い。
・いまいましそうに老母や老父を連れて来るその息子や娘が
 銀行員、一流商社マン、キャリアウーマン、
 一部上場企業に勤めるいわゆるエリートであることが多い。
 忙しくて日頃あまり関わっていないということが多い。
・日常を孤独に過ごしている人。
・仕事を真面目に一生懸命やっていた人で仕事が趣味であったが、
 ほかに趣味といえるものがない。

高齢者には地域性があり、
都会ではすでに核家族化が極まっており、独居老人や老々介護が多い。
勉強ができていい大学に進学し、都会で素晴らしい職を得た息子が
田舎から母親を呼び寄せて近くに住わせていることも多い。
息子は仕事が忙しくて構ってくれず、嫁は関係したがらず、
初めて都会にきて知らない人だらけで打ち解けられず、
孤独を託って生活する人も少なくない。
その結果、何日も誰とも会話せずにいることが普通だという。

田舎ではまだ2世代、3世代でワイワイ住んでいるうちも多く、
別居だとしても農業、漁業などを生業としていると、
元気でいるかぎりその高齢者が一番の物知りで生き字引として
地域から崇められ尊敬をうけているのをしばしば見受ける。
収穫などの重要決定事項や
困ったことがあったときの相談役として欠かせない重要人物である。
こういう地域の高齢者は案外元気で、
80代はもちろん、90代でも頭脳明晰で、
生まれ育った地域から動かずにいると
小学校からの親友やらなんやらお互い長寿なので友人が多い。
友人同士で寄り合ってはいろいろな情報を交換しているので、
「こないだもらった湿布が凄く良かったからよー、
 友達に言ったら羨ましがられた。」
とか、外来に通っている80代後半の患者さんが
頻繁に「友達」の話をするのは微笑ましい。
東京ではこういう光景にはほとんどお目にかかれない。
大体、都心で高齢者を診察するときにはまず職業は聞かない。
退職して無職に決まってんだろ、って顔されるのがオチだから。
田舎ではちがう。
いつも誰にでも聞いているように職業を尋ねると、80代でも
「大工です」「床屋です」「百姓です」「漁師です」
と答えるおじいさん、
「畑の仕事」「干物作ってる」「海女です」
などと答えるおばあさんばかりである。

こういう精神的な張り合いや家族や友人との会話、
ゲートボールなどの楽しい遊び、
適度に緊張感を強いられる仕事などが
ボケを予防する大きな要素になるようである。
もちろんこれで全てが解決するわけではなく、
そういう人でもボケることはあると思うが
せめて進行を遅らす効果はありそうである。

同じ田舎にいても息子や娘が東京に住んでいて、
老夫婦だけになっている人たちや、
都心から別荘を買って移ってきた人でボケが進行する人たちがいる。
核家族化が進む今日この頃であるが、
家族をボケさせたくなければ、
せめて電話での会話を頻繁にしたり、
友人との付き合いを推奨したり、
人と関わるような趣味を持ってもらったり、
楽しい行事に連れ出したり、
たまには一緒にトランプ、碁、将棋、ボードゲームなどを楽しむなど
構って構って構い尽くすのがいいのではないだろうか。
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by decoppati | 2005-02-09 20:53 | 脳外科の仕事